1. 最低限の英語力(語学力)が必要
本講座では簡単な英会話ができることを受講の条件にしています。
語学教師であれば、直接法で教えるとしても基礎的な英語はできなければなりません。
もちろん英語力が完璧である必要はありませんが、日本語学習者の意識として英会話ができない教師から積極的に習いたいとは思わないでしょう。
学習者からすれば教師に英語力があることは常識的な話であり、もし英語ができなければ、初級の学習者とコミュニケーションをどうとるつもりかと疑われます。
そうなれば学習者からの信頼は得られにくいのは明白です。
なぜかというと、学習者のいうことが理解できなければ、教師と学習者との理解は一方通行になるからです。

2. 英語が必要でないというのは本当か
まず英語力が必要かどうかについて、本校では最低限の英語力(語学力)が必要だと考えていますが、他の日本語教師養成講座(以後は「他の機関」)に問い合わせたことがある本校受講生の多くは日本語だけ使えれば問題なく英語力は要らないと言われたそうです。したがって他の機関では英語は必要ないという立場がほとんどであろうと推測されます。
その理由はだいたい下記の通りです。

1 学習者はネイティブ(日本人)から習いたい
2 日本の日本語学校では英語を使わずに日本語を日本語で教える
3 英語の代わりに絵、ジェスチャー、動画を使って日本語を教える

1に関してはネイティブ日本語教師から習いたい学習者が多いのは事実ですが、だからといって日本語教師が英語や他の言語を知らなくても良いという理由にはなりません。
英語を使う、使わない以前の問題として母語以外に一、二か国語を学習している日本語教師のほうが学習者の立場にもなりやすく、信頼され好感を持たれるのではないでしょうか。
特に英語はインターナショナル言語として定着している現代において、語学教師が英語で学習者とコミュニケーションが取れないとなればいろいろな場面で不都合が生じます。
2に関しては確かに日本国内の日本語学校ではその傾向にありますが、日本国内でも一部の学校、企業、プライベート、オンライン等では日本語だけで教えているわけではありません。英語を使って教えるところも少なくありません。
ましてや海外では英語や現地語を使って教えることのほうが圧倒的に多いわけで、日本語を日本語だけで教える場合は教師と学習者に媒介語(共通言語)がないことが理由でもあります。
3に関しては絵、ジェスチャー、動画はあくまでも説明の手段ですが、英語を使うのも手段であります。そしてその多くの場合、ジェスチャー、動画を使うより英語を使ったほうが短い時間で正確に説明することができます。

3.最低限の英語力を必要とする理由
本校では最低限の英語力(その他の語学力も含む)が必要だということを三つのポイントから述べたいと思います。

1 日本語を一外国語として客観的に見られるようになる
英語やその他の外国語を日本語教師が知れば知るほど日本語が一外国語としてどのような言語であるかが客観的に見られるようになり、多言語との比較の中でよりかわりやすく日本語の指導ができるようになる。その点、教師が日本語しか知らなければ日本語の特徴自体よくわからないため、より具体的に日本語がどんな言語であるかを説明することは不可能である。

2学習者の立場がよくわかる
日本語教師自身が少しでも英語(その他の外国語を含む)を学習しておくと、単語一つを覚えるにしても文法事項一つを理解するにしてもどれだけの労力を要するかが学習者の立場で容易にわかるが、日本語しか知らない教師は学習者の立場で考えることができない。これは語学教師としては致命的である。

3英語(その他の言語を含む)を使うメリットがある

  1. 日本語学習者にとっての「日本語」は、日本人にとっての英語と違って、想像以上に異質な言語であり、「日本語」だけを使って「日本語」を教えると、目的と手段が混同され、学習者は何が何だかよくわからなくなるという状態に陥ることがある。これを食べ物に例えると「日本語」という食べ物を口に入れてやるとき「英語」という手段であるスプーンを使う場合、スプーンはまるく格好が良ければ、それに盛った食べ物もスムーズに口に入り、おいしく食べられる。それに対し、「日本語」で「日本語」を教えると、スプーンなしで皿に盛った食べ物を口に流し込む感じである。つまり、どこからどこまでが学習目的としての日本語で、どこからどこまでが手段としての日本語か、わからなくなる。
  2. 日本語教師が学習者の良きリーダーであるためには、学習者の良き話し相手になる必要がある。学習者は十人十色で、その学習目的、能力、背景、性格、進歩の度合いは、皆違う。そのとき、学習者とのコミュニケーションを助けるのは英語であり。休憩時間まで、日本語で話しかけるわけにはいかない。
  3. 学習者から次のような質問を受けたとき、日本語で答えるより、英語で答えるほうが、論理的にモノが言えるし、学習者からの信頼も得られる。

例えば、初級の学習者から次のような質問を受けた際に日本語で説明するのは至難の業であるが、英語では1分で答えられる。

Q: 先生はどうして日本語を教えることを職業にしたのですか?

Q: 「私が担当教師の山田です」と「私は担当教師の山田です」の違いは何ですか?

4.本講座はプロの日本語教師を目指す
日本語だけしか知らなくても学習者の間違った日本語を指摘する程度のことはできるでしょう。しかしながら、その間違いを間違いとして学習者が認識して理解できているのか、その確認が日本語を教える上で重要になります。その役割は媒介語の英語でできます。この場合の英語は目的ではありません。効率の良い手段です。
本講座が目指す日本語教師は学習者にしっかりと日本語を習得させられるプロの日本語教師であり、そのためには最低限の英語力(語学力)は必要だと考えます。

5.発信型の英語力のアップにつながる
最後にどのくらいの英語力があれば大丈夫ですかという質問を受けることがありますが、最初に申し上げた通り、簡単な英会話力があれば問題ありません。それより、英語を使って日本語を教えることを自分自身の英語の学習と考えてください。これまで日本人が受けてきた英語教育は英語の知識を一方的に受ける受信型の英語教育でしたが、英語を使って日本語(という文化)を教えるということは日本人が自らを表現する、国際社会で今後より必要とする発信型の英語教育の最先端でもあります。英語を使って日本語を教えれば教えるほど教師自身の英語力も飛躍的にアップすることは間違いありません。

卒業生の声をご参照ください。

東京都 Mさん

都内の日本語教師養成講座に、何件か見学にいきましたが、入学まで至らなかったのは、どこも日本人による日本語だけでの養成講座であったことでした。

しかし、こちらの学校では、英語で考えながら、日本語を学ぶ事が出来ることが良かったと思います。

全ての学習者が英語圏ではないのですが、外国人が日本語を学ぶときに間違えやすい表現、文法、考え方を知ることができました。対面は対面の良さがありますが、こちらの通信ならではのマンツーマン指導で、より知識を深めることができました。

今後はこちらで学んだことを再度自分なりに咀嚼し、自分の言葉で教えることができるように準備を進めていきたいと思います。